この記事は「Power BI入門 家計簿レポート」シリーズの第6回目で、前回完成したデータモデルをもとに、収支サマリーページを作りながら、レポート作成の基本とメジャーの作り方を学びます。

ミムチ

データモデルが完成したので、早くグラフを作りたいですぞ!

列をドラッグすれば数字が出るのですな?

パワ実

それでも数字は出ますが、「貯蓄率」のようなKPIは作れません。

今回は、KPIを正しく作るための「メジャー」を学びましょう。

前回は、DAXでカレンダーテーブルを作成し、リレーションシップを設定して、家計簿データのデータモデルを完成させました。

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今回からいよいよレポート作成に入ります!

家計の収支をひと目で把握できる「収支サマリーページ」を作りながら、レポートのレイアウトの考え方と、DAXでメジャーを作る方法を解説します。

この記事でわかること
  1. レポートのレイアウト設計の基本
  2. 暗黙的メジャーと明示的メジャーの違いと、メジャーの必要性
  3. 基本的なメジャーの作り方

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今回実施するところ

このシリーズでは、Power BIを使ったデータドリブンな意思決定の流れを学ぶことができます。

前回までに、③データの準備が完了し、今回からステップ④「Power BIで可視化・分析」に入ります。

今回と次回の2回に分けてレポートページを作成します。

今回は「収支サマリーページ」を作りながら、レポート作成の基本とメジャーの作り方を学びます。

ミムチ

ようやく、実際のレポート作成ができるのですな!

ここまで長い道のりでしたぞ…

今回作成するレポートページ

今回作成するのは、第1回でお見せした完成版レポートの「収支・資産サマリー」ページです。

  • 上側:総収入・総支出・収支差額・貯蓄率・総資産残高の5つのKPIカード
  • 下側:月ごとの収入・支出の棒グラフに、貯蓄率の折れ線を重ねた月次推移グラフ
  • 左側:年と月で絞り込めるスライサー
ミムチ

このページを見れば、「今年いくら稼いで、いくら使って、いくら貯められたか」と「今の資産がいくらあるか」がひと目で分かりますな!

このページのビジュアルは、第2回で整理したKPIと対応しています。

知りたいこと
(第2回で整理した問い)
KPI(指標)ビジュアル
今年の収入・支出はいくらか?総収入・総支出KPIカード
いくら貯められたか?収支差額・貯蓄率KPIカード
今の資産はいくらあるか?総資産残高KPIカード
毎月の収支・貯蓄率はどう推移しているか?月別の収入・支出・貯蓄率月次推移グラフ
(棒+折れ線)
特定の年・月に絞って見たい―スライサー(年・月)

このように、「知りたいこと」から必要な情報を洗い出し、見やすいビジュアルを選択していきます。

パワ実

ちなみに、最終的に完成させるレポート全体は、以下から見ることができます!

レポートレイアウトの考え方

レポートページを作る前に、レイアウトの考え方を整理しておきましょう。

Microsoft Learnの「効果的なレポートをデザインする」というモジュールで、レポートレイアウトの基本が解説されています。そこからポイントを3つ紹介します。

レポートレイアウトのポイント
  1. 重要な情報は左上に置く
    人はページを左上から見始めます。
    最も知りたい数字(今回なら総収入・総支出などのKPI)を、左上から横に並べます。
  2. 左→右、上→下の流れで配置する
    まず上段のKPIで「数字」をつかみ、次にその下の推移グラフで「変化」を読み取る、という視線の流れに沿って置きます。
  3. 揃えて、余白で区切る
    関連するビジュアルはグループにまとめ、縦横の端を揃えると整って見えます。
    グループの間は余白で区切り、1ページに詰め込みすぎないようにします。

参考:効果的なレポートをデザインする – Microsoft Learn

スライサーの配置について

これは私の経験的な話ですが、年や月などの絞り込みは、ページの上部か左側にまとめることが多いです。

「まず絞り込んでから数字を見る」という操作の順番と、視線の流れが一致するためです。

この考え方で設計した、今回の収支・資産サマリーページのレイアウトがこちらです。

まずは列をそのまま置いてみる

KPIカードと月次推移グラフの配置

まずはメジャーを作らずに、fact_Cashflowの「金額(円)」列をそのままドラッグして、KPIカードと月次推移グラフを置いてみます。

1.前回までのPower BI Desktopファイルを開き、「レポートビュー」に切り替え、画面下のページタブをダブルクリックして、ページ名を「収支・資産サマリー」にします。

ミムチ

前回作成したテスト用のビジュアルが残っていたら削除しますぞ。

2.「視覚化」ペインの「カード」をクリックし、データペインでfact_Cashflowの「金額(円)」にチェックを入れます。

カードに数字が表示され、「金額(円)の合計」というタイトルになっています。

列にチェックを入れただけで、Power BIが自動的に「合計」で集計してくれています。

これが「暗黙的メジャー」です。

3.カードをCtrl+C、Ctrl+Vでコピーして、合わせて5枚を上段に横一列に並べます。

4.「視覚化」ペインの「集合縦棒グラフ」をクリックしてカードの下に配置し、X軸にdim_Dateの「年月」、Y軸にfact_Cashflowの「金額(円)」をドラッグします。

金額の降順で並んでいる場合は、グラフ右上の「…」(その他のオプション)→「軸の並べ替え」から、年月の昇順に並べ替えておきます。

↓

暗黙的メジャーを使う際の問題

ここでカードの数字をよく見ると、収入と支出が相殺された「差額」になっています。

収入はプラス、支出はマイナスで記録されているので、「金額」をそのまま合計すると両方が相殺されてしまいます。

「収入だけ」を出すには、カードを選択し、フィルターペインの「このビジュアルでのフィルター」に「収支」を追加して「収入」を選ぶことで、総収入が表示されます。

グラフも、凡例に「収支」を置けば収入と支出の棒に分かれます。

ただ、この方法には3つの問題があります。

暗黙的メジャーで起きる問題
  1. 何もしないと、収入と支出が相殺された値になる
    数字の意味がひと目で分かりません。
  2. 「収入だけ」という条件が、ビジュアルごとのフィルター設定に散らばる
    カードにもグラフにも、別のページにも、毎回同じ設定が必要です。
    1つ設定を忘れると数字が食い違い、定義を変えたいときは全ビジュアルを直して回ることになります。
  3. 集計結果を使った計算ができない
    貯蓄率は「収支差額 ÷ 総収入」で求めますが、カードに表示されている「合計」の値を、別の計算から参照する手段がありません。

つまり、集計の定義をビジュアルから切り離して、名前を付けて、別の計算からも使えるようにする仕組みが必要で、そのため「メジャー」を使います。

ミムチ

集計に名前を付けて再利用するには、「メジャー」が必要ということですな!

メジャーとは?

暗黙的メジャーと明示的メジャー

メジャーとは、DAX式で定義する「集計の計算式」です。

ビジュアルに置かれた年や月、カテゴリなどの条件に応じて、その場で動的に計算されます。

メジャーには2種類あります。

項目暗黙的メジャー明示的メジャー
作り方列をビジュアルにドラッグすると自動で作られるDAX式を書いて自分で定義する
できる集計合計・平均などの単純な集計のみ条件付きの集計や、集計結果どうしの計算
再利用ビジュアルごとに設定するため、再利用できない一度作れば、どのビジュアルでも使い回せる

なぜメジャーを作るのか

メジャーを作る理由
  1. 「収入だけ」「支出だけ」という条件を、ビジュアルではなくメジャーの定義に持たせられる
  2. 貯蓄率のように、集計結果どうしを組み合わせた計算ができる
  3. 一度作れば、どのビジュアルでも同じ定義で再利用できる

このため、Power BIでレポートを作る際は、KPIを「明示的メジャー」として作成するのが基本です。

メジャーの作成方法

今回作成する6つのメジャー

メジャーは、「データビュー」や「モデルビュー」タブの「新しいメジャー」から、DAX式で作成します。

メジャー名用途
総収入KPIカード・グラフ
総支出収支差額の計算用
収支差額KPIカード
貯蓄率KPIカード・グラフ
総資産残高KPIカード
総支出(表示用)KPIカード・グラフ

操作方法

1.データペインでfact_Cashflowを右クリックし、「新しいメジャー」をクリックし、数式バーに、以下のDAX式を入力します。

総収入 = CALCULATE(SUM(fact_Cashflow[金額(円)]), fact_Cashflow[収支] = "収入")

2.Enterで確定すると、データペインのfact_Cashflowの中に、電卓アイコンの付いた「総収入」が追加されます。

この電卓アイコンが、メジャーの目印です。

CALCULATE関数のポイント

CALCULATEは、第1引数に「集計の式」、第2引数以降に「フィルター条件」を指定して、条件に合う行だけを集計する関数です。

ここでは、SUMで金額を合計しつつ、fact_Cashflowの「収支」列が「収入」の行だけに絞っています。

つまり「収入の行だけの金額合計」になります。

3.「総収入」を選択した状態で、「メジャーツール」タブの書式が「整数」になっていることを確認し、桁区切りをオンにします。

4.同じ要領で「総支出」を作ります。条件を「支出」に変えるだけです。

総支出 = CALCULATE(SUM(fact_Cashflow[金額(円)]), fact_Cashflow[収支] = "支出")

支出は元データでマイナスの金額として記録されているので、この総支出もマイナスの値になります。

この点は、後で表示用のメジャーを作って対応します。

5.次に「収支差額」です。今作った2つのメジャーを角かっこで参照します。

収支差額 = [総収入] + [総支出]

このように、メジャーの中で別のメジャーを使うことができます。定義を1か所にまとめられる、メジャーの便利なところです。

総支出がマイナス値なので、引き算ではなく足し算で差額になります。

6.続いて「貯蓄率」です。割り算にはDIVIDE関数を使います。

貯蓄率 = DIVIDE([収支差額], [総収入])

「÷」の記号でも計算できますが、DIVIDE関数は分母がゼロのときにエラーにならず、空白を返してくれるので、割り算はDIVIDEを使うのがお作法です。

貯蓄率は、「メジャーツール」タブで書式を「パーセンテージ」にし、小数点以下の桁数を1にしておきます。

7.「総資産残高」は資産のテーブルから作るので、fact_Assetsを右クリックして「新しいメジャー」をクリックします。

総資産残高 = SUM(fact_Assets[評価額(円)])

fact_Assetsは最新時点の資産のスナップショットなので、評価額をそのまま合計するだけで現在の総資産になります。

こちらも書式を「整数」、桁区切りをオンにしておきます。

8.最後に、グラフで支出をプラス方向に表示するための表示用メジャーを、fact_Cashflowに作ります。

総支出(表示用) = ABS([総支出])

「総支出」のメジャー自体をプラスにしてしまうと、収支差額の計算が変わってしまいます。

計算用と表示用でメジャーを分けておくのがポイントです。

これで6つのメジャーができました。

データペインを見ると、fact_Cashflowに5つ、fact_Assetsに1つ、電卓アイコンのメジャーが並んでいます。

ミムチ

メジャーの中でメジャーを使えるから、貯蓄率が簡単に作れたのですな!

ビジュアルをメジャーに差し替える

KPIカードの差し替え

メジャーができたので、先ほど置いたビジュアルの値を、作成したメジャーに差し替えていきます。

1.1枚目のカードを選択し、フィールドの「金額(円)の合計」を外して、代わりに「総収入」をドラッグ&ドロップします。

↓

先ほどビジュアルに設定したフィルターは削除しておきましょう。

2.同じように、2枚目に「総支出(表示用)」、3枚目に「収支差額」、4枚目に「貯蓄率」、5枚目に「総資産残高」を入れます。

収入と支出が分かれて、貯蓄率もパーセントで表示されました。

3.カードの書式設定で「吹き出しのラベル」をオフにし、「全般」の「タイトル」をオンにして、表示したいテキストを入力します。

↓

これで、2枚目のカードのタイトルも「総支出」として表示できます。

月次推移グラフを複合グラフに

1.グラフのY軸から「金額(円)の合計」と凡例の「収支」を外し、Y軸に「総収入」と「総支出(表示用)」を追加します。

その後、「視覚化」ペインでビジュアルの種類を「折れ線グラフおよび集合縦棒グラフ」に変更します。

月ごとに収入の棒と支出の棒が並んで表示されました。6月と12月は賞与があるので、収入の棒が高くなっています。

2.「折れ線グラフおよび集合縦棒グラフ」の「線のY軸」に「貯蓄率」をドラッグします。

棒グラフの上に貯蓄率の折れ線が重なりました。

貯蓄率はパーセントなので、右側の第2軸に表示されます。

賞与月は貯蓄率が跳ね上がり、7月は支出が収入を上回ってマイナスになっている、という月ごとの状況がひと目で分かるようになりました。

3.書式設定から、グラフのタイトルを「月次の収支推移(円)」に変えておきます。

スライサーの追加と動作確認

1.「視覚化」ペインの「スライサー」をクリックし、dim_Dateの「年」を追加して、ページの左側に配置します。

もう1つスライサーを置いて、dim_Dateの「月」を追加し、年スライサーの下に配置します。

月が「1月」から「12月」の順に並んでいるのは、前回dim_Dateで「列で並べ替え」を設定したおかげです。

スライサーの間隔が詰まっている場合は、書式設定の「複数ボタンのレイアウト」で固定サイズをオフにすると調整できます。

2.年スライサーで「2025」を選ぶと、KPIカードの数字とグラフが2025年のデータに切り替わります。すべてのビジュアルが連動していますね。

ただし、総資産残高だけは変わりません。

前回説明したとおり、fact_Assetsはdim_Dateとリレーションシップを設定していないためです。資産は最新時点のスナップショットなので、年で絞り込まれないのが正しい動きです。

3.月スライサーで「6月」を選ぶと、6月の収支だけに絞り込まれます。

賞与月なので貯蓄率が高くなっていますね。確認できたら、月の選択は解除しておきます。

4.仕上げに、「ホーム」タブの「テキストボックス」で「家計簿の収支・資産サマリー」とタイトルを入力し、フォントサイズを大きくして左上に配置します。

5.動作に問題がなければ、ファイルを上書き保存しておきます。

これで、収支・資産サマリーページの完成です!

パワ実

お疲れ様でした!

第2回で整理したKPIが、ついに画面の上で動きましたね。

さいごに

この記事では、レポートレイアウトの考え方を整理し、DAXで6つのメジャーを作成して、収支・資産サマリーページを完成させました。

この記事のまとめ
  1. レポートのレイアウトは、重要な情報を左上に置き、左→右・上→下の流れで配置するのが基本
  2. 暗黙的メジャーでは、集計の定義がビジュアルごとに散らばり、集計結果を使った計算ができない
  3. KPIは、DAX式で明示的メジャーとして作成する。一度作れば、どのビジュアルでも再利用できる

「集計に名前を付けて、1か所で定義する」というメジャーの考え方は、家計簿に限らず、あらゆるPower BIレポートの土台になります。

ミムチ

次回は、「どこにお金が消えているか」を可視化する、支出カテゴリ分析ページですぞ!

ドーナツグラフやドリルダウンも登場するので、楽しみにしていてくだされ!

ABOUT ME
パワ実|株式会社モコベル 代表取締役
Power Platform/Microsoft 365/Miccrosoft Copilot/Microsoft FabricのITコンサル・研修講師。Microsoft MVP(2025年受賞)、Microsoft認定トレーナー(MCT)。自治体にてDX担当→ITコンサル→独立を経て2026年に法人化。著書にPower Platform関連書籍4冊。「非エンジニアでも使いこなせる」をテーマに、ブログ・YouTube・Xで発信しています。